海外のピラティス関係者への調査では、需要の増加と競争の激化がともに報告されています。指導する人にとって、単に「人気がある」で終わらない話です。ただし、この結果は日本や海外全体の市場を代表する数字ではありません。

2026年9月19日、海外の業界メディアThe Pilates Journalが、ピラティス関係者への調査結果を公開しました。さらにオーストラリアの業界団体は、指導者の仕事を統計上どう把握するかを論じています。海外の動きを、出典ごとの対象と限界を明らかにして紹介します。

海外の955人調査では、需要と競争が同時に話題に

発行元によると、回答したのはインストラクター、スタジオ経営者、教育関係者など955人です。公開された調査紹介ページには、次の結果が示されています。

公開された結果 質問の対象を含めた読み方
75% 過去12か月でピラティスへの需要が増えたと回答
64% クラスが定員、または定員に近いと回答
52% 競争の激化を仕事上の大きな変化として挙げた
50% 報酬について尋ねられたインストラクターのうち、報酬が低いため仕事を断った経験があると回答
65% 継続教育・専門能力の開発に投資する予定と回答

50%を全回答者955人の半数として扱うことはできません。公開ページには、報酬について回答したインストラクターの人数が記されていないため、「約478人が仕事を断った」といった計算はできません。

定員に近いクラスがあっても、仕事の条件は別の話

需要の増加と競争の激化は、それぞれ異なる内容の回答として公表されています。75%と52%を足して100%にするものではありません。両方が報告されていることこそ、この調査のおもしろい点です。受講希望者が増えていると感じる人がいる一方、選ばれるための競争も意識されています。

ただし、需要の増加が競争を引き起こしたと調査が証明したわけではありません。64%の「定員、または定員に近い」も、回答者のクラスに関する報告です。どの国・地域の、どの時間帯や施設で混んでいるかは公開概要から分かりません。「海外では空きがない」「インストラクターは皆、高収入」と読み替えないことが大切です。

日本で活動するインストラクターなら、この数字を市場予測として使うより、自分の担当するクラスで何が起きているかを確かめるきっかけにできます。たとえば体験希望の問い合わせ、希望時間帯、定員に対する参加人数、継続率を同じ期間で記録する方法があります。これは編集部の実務への置き換え例で、調査が推奨した手順ではありません。

報酬と学び直しも、海外の指導者にとって現実的なテーマ

公開された調査紹介によれば、報酬について尋ねられたインストラクターの50%が、報酬の低さを理由に指導の仕事を断った経験があると回答しました。「需要があるなら、どんな条件でも仕事を引き受けるはず」という見方とは異なる結果です。確認した公開概要に具体的な報酬額はなく、日本の報酬相場を推定することもできません。

また、65%が継続教育や専門能力の開発に投資する予定と回答しています。これは「資格を取ると収入が増える」という効果の証明ではなく、学び直しを考える回答者が多かったという結果です。

日本で仕事を選ぶときには、金額だけでなく条件全体を比べる必要があります。以下は編集部の確認例です。

  • レッスン1本の報酬に、準備・片付け・移動・記録の時間を含めて考えられるか
  • キャンセルや代講が発生した場合、支払い条件はどうなるか
  • 必要な研修、使用できる機器、担当する受講者の範囲が明確か
  • レッスンの継続率や問い合わせ数を、何を分母にして見ているか

求人や業務委託の条件を比べる手順は、インストラクターの仕事探しと料金・顧客管理で詳しく扱っています。研修を選ぶなら、いま困っている指導場面と学んだ後に変えたいことを先に書き出すと、目的が明確になります。継続学習の記事も参考になります。

オーストラリアでは「指導者の仕事をどう数えるか」も論点に

仕事の中身をどう説明し、統計に残すかをめぐる議論もあります。Pilates Association Australiaの2026年7月の声明は、同国の国勢調査に向け、ピラティス関係者の仕事内容が従来の統計では十分に見えなかったという団体の問題意識を示しています。団体は、治療的な実践、個別性の高い指導、一般向けフィットネス指導など、実際の業務に即した職域の区別を提案しています。

これは業界団体の提案と問題提起です。提案した区分がすでに公的な職業分類として採用された、あるいは日本の資格や医療行為の区分に当てはまる、という意味ではありません。それでも「ピラティスの仕事」と一口に言っても、担当する人や目的、業務範囲は幅広いことが分かります。インストラクター自身が提供できる内容と対応範囲を明確に伝えることは、海外の議論から考えられる実務上の問いです。

この数字で分かること、まだ分からないこと

The Pilates Journalの調査について確認できたのは、発行元の公開記事と紹介ページです。完全版レポートの本文は閲覧できておらず、国・地域別の回答数、回答者の募集方法、各設問の母数や質問文は確認できません。したがって「日本でも75%が需要増を感じている」とは書けません。また、海外全体を代表する確率標本とも確認できません。

それでも、海外の業界関係者が需要と競争を同時に感じ、報酬や学習についても考えていることは、公開資料から読み取れます。日本の市場規模を示す数字としてではなく、自分の地域で「どの時間帯に需要があるか」「どんな指導が求められているか」「続けられる仕事の条件か」を調べるための問いとして使う。海外ニュースを現場に生かすなら、そこが出発点です。

よくある質問

955人の調査なら、日本の市場予測にも使えますか?

人数の多さだけでは判断できません。公開概要で国別の回答数や募集方法を確認できないため、日本の需要増加率や報酬相場を予測する根拠には使えません。

50%という数字をSNSで紹介するとき、何を添えればよいですか?

「報酬について回答したインストラクターのうち」と対象を添え、発行元の公開概要へリンクします。「海外の指導者の半数」「955人の半数」と対象を広げないことがポイントです。