呼吸を説明すると、受講者が吸う・吐くの順番に集中し、動き出せなくなることがあります。そんなときは、号令を増やすより、何を伝えるための呼吸なのかを整理してみましょう。

この記事は、ピラティスを学習中・指導中のインストラクター向けです。呼吸の医学的な評価や治療を教えるものではありません。ここで示す会話と説明順は編集部の独自例です。所属する養成教育や、対象者に必要な安全条件と照らし合わせて使ってください。

最初は、今の呼吸を本人に確かめてもらう

いきなり「もっと深く」と要求する前に、どのように息をしているかを本人と確かめます。Merrithewが公開するSTOTT PILATESの原則でも、仰向けで自然な呼吸を観察する導入を紹介しています。お腹、胸の上側、肋骨の横や後ろなど、どこに動きを感じるかに注意を向ける説明です。呼吸の原則と導入

仰向けでの導入を実施できる条件がそろっている場面で、たとえば次のように問いかけます。

「まずは、今の息の出入りを確かめてみましょう。体のどこが動く感じがしますか。」

ここでは「横が動かないから間違い」と評価しません。「何も分からない」という答えも、その時点の反応として受け止めます。感じる場所の回答だけで、筋肉の働きや呼吸機能を診断しないでください。

仰向けがつらい場合に、この記事だけを頼りに別の姿勢や補助を処方することは避けます。必要な条件を確認できなければ、その導入を見合わせます。姿勢を変えれば必ず問題なく行える、という説明にはしません。

「肋骨」を説明してから、呼吸のイメージを示す

肋骨は、胸の周りを囲む骨です。「胸郭を広げて」と伝えるなら、胸郭という言葉だけで済ませず、何を指すのかを最初に説明します。

STOTT PILATESの公開資料では、肋骨の前・横・後ろを含む立体的な広がりを意識する方法が紹介されています。これを、空気が背中の筋肉に入るという意味に置き換えないことが大切です。呼吸に伴う胸の周りの動きを表す説明として区別します。STOTT PILATESでの説明

独自の声かけ例なら、「胸の横や後ろにも、広がる感じがあるか確かめてみましょう」と表現できます。「大きく広げられるほどよい」と、広がりの大きさを競わせる必要はありません。

説明を聞いた人が肩を強く持ち上げるなど、狙いと異なる動きになった場合は、さらに努力を求める前に「今の言葉を、どんな動きとして受け取りましたか」と聞きます。見えた動きと本人の感覚を、同じものと決めつけないでください。

体に触れて位置を伝える場合は、呼吸の説明だからという理由で同意を省略しません。本人が触れられることを望まない場合は、そのまま進めないことも含めて説明方法を見直します。

吸う・吐くと、動作の説明を同時に増やさない

呼吸と動きを組み合わせる場面では、開始位置や動かす方向を理解しているかを先に確かめます。動作の内容も分からない状態で、呼吸の順番だけを覚えてもらおうとしないようにします。

次は、すでに教える種目と安全条件を確認した場面での、説明順の例です。新しいエクササイズの手順ではありません。

説明の段階 伝えること 観察と質問
動作を確かめる どこから、どこへ動くか 「始める位置は分かりますか」
呼吸のねらいを添える 今回、何に合わせて息を使うか 「順番のどこで迷いますか」
組み合わせを確認する 学んだ方法の範囲で実施する 号令に追いつくことだけが目的になっていないか
振り返る 難しかった箇所を聞く 「動きと呼吸、どちらをもう一度確認したいですか」

説明を聞いている途中で止まったら、すぐに「呼吸が浅い」と判断しません。号令を待っているのか、順番が混ざったのか、息苦しさがあるのかを分けて確認します。息苦しさや具合の悪さがあれば、単なる理解の問題として練習を続けないでください。

流派による違いは、違いのまま説明する

STOTT PILATESでは、背骨を曲げる・伸ばす動きと呼吸を組み合わせる考え方が示されていますが、目的によって異なる組み合わせも説明されています。一方、Polestar Pilatesは、呼吸の号令ばかりを強調せず、動きの目的に合わせて使う見方を紹介しています。STOTT PILATESの原則/Polestarの指導上の見解

どちらかを「正しい呼吸」、もう片方を「間違い」と分類する資料ではありません。異なる教育体系の説明を切り貼りして、全流派に共通する新しいルールを作らないようにします。

「前の先生とは違います」と言われた場面では、次のように答える方法があります。

「違う説明を受けていたのですね。今回は、この動きで確かめたいことに合わせて説明しています。どの部分が違っていたか、一緒に整理しましょう。」

その後に、実際に採用しているメソッドと目的を具体的に伝えます。違いを説明できないなら、その場でもっともらしい理由を作らず、養成講座の資料や担当講師へ確認します。

「できた」の判断を、息の大きさだけにしない

説明を変えた後は、声が大きくなった、長く吐けたといった変化だけを成功にしないことを提案します。説明の順番を理解できたか、迷ったところを本人が伝えられたかも振り返れます。

たとえば「呼吸の順番を言葉で説明できたが、動きと組み合わせると迷う」という状態なら、理解の確認と組み合わせの練習を分けて記録できます。「呼吸ができない」と一括りにしない方が、次回に確かめることが明確になります。

痛みや体調不良が出たら運動を中止します。健康上の不安、けが、気になる症状、妊娠中・産後などは、事前に医師などへ相談するよう案内してください。一般的な運動前の相談と中止の注意

呼吸の工夫で病気や痛みを解決すると約束しないことも重要です。医療への相談が必要な場面を、説明のうまさで乗り切ろうとしないでください。

次回の説明につながるメモを残す

記録には、使った言葉と受け取られ方を並べます。「立体的に広げる、では分からなかった。肋骨の位置を説明した後、横の動きを感じると本人が話した」のような書き方です。これは編集部の架空の記入例であり、実際の受講者の報告ではありません。

同時に、その例だけでは分からないことも残します。感じ方の回答から筋肉の働きを確認したとは書かず、説明への反応として扱います。

言葉選びに迷う場合は、声かけを見直す実践メモを参考にしてください。流派の原則や動作との組み合わせを確かめ直したい場合は、継続学習の進め方も役立ちます。

呼吸を教えるときは、たくさん号令をかけることより、「観察する」「意味を説明する」「動きとの組み合わせを確かめる」を分ける。その順番から、受講者がどこで迷っているかを探してみましょう。

次に確認したい教え方